【解説】海外のアニメファンがそのまま使う日本語 tsundere、isekai、senpai、bakaは英語の中でどう使われているか
本記事の見どころ
- 「tsundere」は形容詞にも名詞にもなる
- 「isekai」は動詞にまでなった
- 敬称の「-senpai」は、あだ名を作る道具になっている
海外の反応を訳していると、英語の文の中に、日本語がそのまま出てくることがよくあります。「Tsundere Keigetsu is so likeable」「Well it is an isekai」といった具合です。
この記事では、当ブログで訳した英語のコメントから、日本語がそのまま使われている例を集めました。英語圏のファンがどんな意味で、どんな場面で使っているのかを、実際の書き込みを引きながら紹介します。
以下のコメントは Reddit / YouTube / X 等のスレッドから引用・翻訳しています。原文の意図を尊重しつつ、日本語として自然になるよう編集しています。
「〜デレ」の仲間たち
最もよく見かけるのが「tsundere」です。普段はつんけんしているのに、ときどき好意を見せる人物を指す言葉で、英語でもほぼ同じ意味で使われます。『ふつつかな悪女』第10話では、「Tsundere Keigetsu is so likeable(ツンデレの慧月が本当に愛おしい)」と、名前の前に形容詞のように置かれていました。
面白いのは、人間以外にも使われることです。『クレバテス』2期9話では、「the dark beasts are just tsundere for the human race(闇獣たちは、人類に対してツンデレなだけだ)」という書き込みがありました。『これ描いて死ね』第8話では、口では厳しいことを言いながら応援してくれる先生を「tsundere-sensei」と呼んでいます。
同じ「デレ」の仲間では「yandere」もよく使われます。好意が行き過ぎて、相手を傷つけかねないほど執着する人物のことです。『野生のラスボスが現れた!』2期2話では、200年もルファスを待ち続けたスコルピウスが「an absolutely batshit insane yandere(完全にぶっ飛んだヤンデレ)」と呼ばれていました。続く2期3話では、「安全なヤンデレなんて存在しない」という作中の台詞が引用され、喝采を浴びています。
このほか、表情を変えない「kuudere(クーデレ)」、無口な「dandere(ダンデレ)」といった派生語も英語圏のファンの間で通じます。日本ではあまり聞かない分類まで、英語のファン辞典では細かく整理されているのが面白いところです。
「isekai」は動詞にもなった
異世界に転生・転移する物語を指す「isekai」は、英語圏ではもはやジャンル名として定着しています。『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』3期3話の「Well it is an isekai(まあ、異世界ものだからね)」のように、異世界ものらしい展開を受け流すときの決まり文句にもなっています。
さらに、動詞としても使われます。『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い』第3話では、恋愛の展開を後押しするトラックについて「If he's not Isekai'ng people(人を異世界送りにしていないときは)」と書かれていました。「isekai」に英語の進行形の語尾をつけて、「異世界へ送る」という意味の動詞にしているわけです。トラックにはねられて異世界に行く定番の導入が、それだけ広く知られているということでしょう。トラックの擬人化「Truck-kun」については、海外アニメファンのスラング辞典で取り上げています。
「isekai」は、ほかの作品名と組み合わせて形容詞のようにも使われます。『凶乱令嬢ニア・リストン』第3話では、劇中劇を取り入れた展開に「nobody expect isekai Oshi no Ko(誰も予想していなかった、異世界版『推しの子』だ)」という声がありました。
解説:敬称は、あだ名を作る道具
日本語の敬称も、英語のコメントにそのまま出てきます。英語には「先輩」にあたる一語がないため、学校や職場の上下関係を表すときに「senpai」が使われます。『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』最終回の「his former senpai(彼のかつての先輩)」は、日本語とほぼ同じ使い方です。
一方、英語圏ならではの使い方もあります。名前の後ろに「-senpai」をつけて、ちょっとしたあだ名を作るのです。『らんま1/2』3期1話では九能帯刀が「Kunou-senpai」と呼ばれ、『野生のラスボスが現れた!』2期3話では、別作品『Re:ゼロ』のシャウラが、同じ蠍の姿を持つ先輩格として「scorpion-senpai(蠍の先輩)」と呼ばれていました。日本語の「先輩」より、少しおどけた響きがあります。
家族の呼び方も同じです。『無職転生』3期5話では、王級魔法で釣りをする主人公について「Pride of an Onii-chan(お兄ちゃんの威厳)」と書かれていました。「big brother」と訳すと消えてしまう、甘えや親しみのニュアンスを残したいときに、日本語のまま使われるようです。
「baka」「kawaii」「sugoi」
短い感嘆や悪口も、日本語のまま定着しています。代表的なのが「baka」です。『クレバテス』2期9話では、ツンデレの決まり文句を真似た「It's not like I stopped your soul from escaping to save you or anything.. b-baka!(別にあんたを助けるために魂を引き止めたわけじゃないんだからね……ば、ばか!)」という書き込みがありました。「b-baka」と頭の音を重ねて、照れて口ごもる様子まで表しているのがポイントです。
「kawaii」は、かわいさが英語の「cute」では言い足りないときに使われます。『ヤニねこ』第9話では、カンサイの歌と踊りに「kawaii~~」と語尾を伸ばす書き込みがありました。野球でも、村上選手の同点本塁打の記事で、本塁で迎えた西田選手のお辞儀が「kawaii すぎる」と話題になっています。
「sugoi」は、『ぶちぎれ令嬢』第10話の「Nobody died! Sugoi!!(誰も死ななかった! すごい!!)」のように、半ば冗談めかした感嘆として使われます。いずれも、日本のアニメを見て覚えた言葉を、ファン同士の合言葉のように使っているといえそうです。
なぜ訳さずに使うのか
英語で言い換えられる言葉でも、日本語のまま使われる理由はいくつか考えられます。一つは、英語に一語でぴったり合う言葉がないことです。「tsundere」や「senpai」は、英語で説明しようとすると一文が必要になります。もう一つは、ファン同士の共通語としての役割です。日本語の言葉を使うことで、「同じアニメを見ている仲間」であることを示す効果があるのでしょう。
最近では「oshi(推し)」も使われ始めています。『令和のダラさん』第10話では、登場人物の関係を整理したコメントで「her oshi」という表現が使われていました。
日本語が英語に入るのとは逆に、英語の字幕からは日本語の細かいニュアンスがこぼれ落ちることもあります。その例は英語では伝わらなかった言葉遊びの記事にまとめました。「best girl」「waifu」「ara ara」など、日本語と英語が混ざった言葉はスラング辞典で解説しています。
まとめ
英語のコメントに日本語が出てきたら、それは英語に置き換えにくいニュアンスが込められた言葉かもしれません。海外の反応を読むときの手がかりにしてみてください。
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